内寄生虫症(線虫症または条虫症)
症状
貧血症・下痢・栄養失調・食欲不振
予防
線虫駆除は放牧期に1~3ヵ月間隔で実施する。条虫駆除は離乳時期を中心に線虫駆除と交互に年2~3回程度実施する。
また、寄生虫卵による放牧地の汚染を防ぐため投与後は2~3日間舎飼いする。
治療
駆除剤の投与後、下痢・貧血・栄養失調の度合いが強いようであれば整腸剤を飲ませるか、補液・栄養剤の注射等を行う。
線虫:サイベンゾール・アイボメック・リペルコール
条虫:ビチン*
予防上のポイントと注意点
- 下痢による臀部の汚れは汚染の目安である。新しい放牧地での発生はあまり見られないが、2~3年放牧すると必ず発生するので、定期的に駆除を実施することが望ましい。
- 粉末剤等は水に溶けにくいものもあるので、小麦粉と混ぜて水に溶かすと比較的均一に混和する(アルコール溶液で溶かすと体内への吸収が早く危険である)。
- 錠剤は、一晩水に浸しておくと良い。
貧血の発見法
まぶたを下にめくって色を見る。健康時は鮮血色、貧歯血ならピンクから白色。
薬液の飲ませ方
プラスチック製の注射器や空ビン等を用いて前歯と奥歯の間から流し込む。
駆虫剤は、毒性の強いもの、残留性の強いものがあるので、必ず獣医師の指示に従って使用する事。
腰麻痺(指状糸状虫症)
症状
運動障害(歩行困難・起立不能等)・顔面の麻痺・斜頸
予防
- 中間宿主である蚊の殺滅(殺虫剤の散布)を行う。
- 蚊の発生期間中15日間隔でスパトニンを投与する。
- 牛からなるべく離すよう心掛ける(元の宿主である牛の駆虫を実施する)。
治療
駆虫薬(スパトニン・アンチリコン*)と補助薬(ビタミンB1製剤・強肝剤)を1回ないし数日間隔連続投与する。
予防上のポイントと注意点
- 蚊の活動に伴い7~10月に多く発生するので、この時期に合わせて駆虫を実施する事が望ましい。また、潜伏期間が20~30日と比較的長いので、症状が発生する前に行う事が望ましい。
- 早期に発見し、治療を行えば回復の可能性が高いので、日々の観察を良く行い、歩様不良なものがいないかどうか良く確認する。
症状の回復は、神経の損傷の程度によるが、完全回復にはかなりの時間がかかる。
腐蹄症
症状
跛行・趾間腐爛・体重減少・歩様不良・蹄の脱落
予防
- 剪蹄(蹄切り)
- 3%硫酸銅水溶液による脚浴の実施(週に1~2回)
治療
蹄を切り、良く消毒し、罹患部に抗生物質*または10%硫酸銅水溶液を塗布する。
予防上のポイントと注意点
- 多頭飼育においては、ほぼ間違いなく発生し、1頭に発生すると次々と伝染するので早期に発見し治療を行う事が大切。
- 剪蹄を2ヵ月に1回程度定期的に実施する事で、予防・早期発見が可能である。
- 湿地・濡れた敷草等は腐蹄症の原因となるので、床等をなるべく清潔に保つよう注意する事が必要である。
<正しい肢勢>
肢軸が地面と垂直になっている。
外寄生虫症
症状
かゆみ・擦り付けによる脱毛<予防>薬剤(アズントール・ボルホ散・バリゾン乳剤・ネグホン)の噴霧・散布
治療
薬浴が最も効果的である。噴霧または散布でも効果はあるが、皮膚まで薬が届くよう念入りに行う必要がある。
予防上のポイントと注意点
寄生虫(ダニ・シラミ等)の発生時期・剪毛時のけがの回復等を考慮し、6月頃に定期的に実施することが望ましい。
雨の日に噴霧・散布を行うと薬剤が流れ落ちてしまうので、晴天の日を選んで実施すると良い。
注意
上記の中には、要指示医薬品が含まれています(*印)。これらの使用に当たっては、獣医師にご相談下さい。