私たちは、畜産技術情報の収集・発信を通じてわが国の畜産の発展と生活に必要な畜産物の安定供給に寄与することを目指しています。

めん羊の飼育施設

①分娩柵

短い柵を蝶番でつないだ折りたたみ式の柵で、分娩後の母子羊や病畜の管理のための単房を作るのに用いられる。また、長柵と組み合わせて囲いを作る際のコーナー部分や、扉に使用することもできる。

②単房用草架

単房に収容した羊に粗飼料を給与するためのものである。単房での乾草給与は草架を用いず、投げ込み給与を行うことが多いが、食草を床に置くと羊が踏みつけて無駄が生じるほか、脚に絡みついてしまうこともあるので、このような給餌器があると便利で経済的。

③仕切柵

間仕切りには一般に長柵が用いられる。スライド柵は、二枚の柵を伸縮できるように組み合わせたもので、ゲートとして用いることができる。

④飼槽兼用草架(片側式)

壁面や通路側に設置し、片側からのみ採食させるタイプ。上部が草架、下部が飼槽となっており、濃厚飼料、サイレージ、乾牧草を同時に給与することができる。かなり大型で、飼槽内に子羊が侵入し易いので、成羊のみの群で使用した方がよい。

⑤子羊柵

子羊だけが出入りできる柵で、群飼となった子羊に飼料を給与するためのクリープスペースを作るのに用いる。斜線部はスライド式で開閉できるようにしているが、母羊の侵入を防ぐため、出入り口の幅を15~25cm程度に調節できるようにしておくとよい。

⑥子羊飼槽

クリープ柵内で子羊に濃厚飼料を給与するための飼槽。決まった形があるわけではないが、飼料の汚損を防止するため、子羊が飼槽内に入ることができず、簡単に転倒しないものが望ましい。

⑦飼槽兼用草架(両側式)

羊舎の中央に設置し、両側から採食させるタイプで、片側式と同様、粗飼料と濃厚飼料を同時に給与することができる。草架部分を格子状とせず、板で塞いでいるのは、乾草の羊毛への混入を防ぐためである。

備考

ここに上げた柵及び飼槽類は農林水産省家畜改良センター岩手牧場で使用しているもので、一例にすぎません。これらを参考に、それぞれの羊舎の条件や飼養頭数等に応じて使い易いものを作成しましょう。

放牧柵

ネットフェンス

ネットフェンスは、めん羊の放牧に多く利用されている牧柵資材のひとつである。長い距離では施工コストが高くなるが、丈夫で脱柵の危険が少なく、パドックなどの比較的小さな面積での利用に適している。

高張力銅線を用いた電気柵

電気を通さない特殊な木と伸縮性のある丈夫な銅線の組合せによって作られ、耐用年数が長く、また野犬対策にも有効な電気牧柵システムである。外柵として長距離の利用に適しており、簡易電気柵と併用することで、極めて集約的な放牧が可能となる。

ネットフェンスと電気柵の併用柵

ネットフェンスの内側に電気架線を設置すれば、ネットフェンスの物理的機能と電気柵の心理的機能を併せ持つ脱柵防止効果の高い柵となり、外側に設置すれば、野犬の侵入を防止することもできる。また、この電気架線を利用して、簡易電気柵を中仕切柵として用いることが可能となる。

簡易電気柵(移動式)

簡易電気柵は、主に中仕切柵として用いられ、ポリエチレン線に細いスチール線を編み込んだ軽量ワイヤーや、同じ材質で作られたネットが使用される。中間支柱にもプラスチックなどの軽量の材質が使われているため、設置や移動が簡単にでき、帯状放牧のような集約的な放牧管理も手軽に行うことができる。また、放牧地の中にネットフェンスなどの恒久的な中仕切柵を何カ所も設置する必要がないため、広い面積では資材コストを低減できるほか、施肥や掃除刈りなどの大型機械による草地管理作業も楽に行えるようになる。

注意

電気牧柵は、正しく施工しなければ、その能力を十分に発揮することができなかったり、故障の原因と なることがあります。
また、立地条件や使用目的によっては、施工方法や使用する資材を変える必要もありますので、導入する場合は専門家に相談されることをお勧めします。

脚浴施設

脚浴場

木製脚浴場

脚浴場は、腐蹄症の予防と治療のために必要な施設である。本格的な脚浴場では、薬液槽に入る前に蹄部の汚れを洗い落とせるように水を入れた洗脚槽を設けておくことで薬液による消毒がより効果的になるほか、泥や糞による薬液の汚れを防止することができる。薬液槽の長さは4~6m、幅は60cm程度が適当である。また、腐蹄症治療のためには、剪蹄の後がよく、蹄部を薬液に数分間浸しておくとより効果的である。薬液槽の前後にゲートを設けておくことで、めん羊を薬液槽内に留めておくことが可能となる。
少頭数飼養の場合には、あまり立派な施設は必要なく、木製の脚浴槽や、コンクリート製のU字溝などを利用すればよい。木製脚浴槽は、移動ができるので便利。なお、薬液には、一般に5~10%の硫酸銅または硫酸亜鉛の溶液が用いるられるが、硫酸銅は毒性が強いため諸外国では最近、硫酸亜鉛が推奨されている。また、薬剤を水に溶かさず、消石灰と混ぜ、粉末薬として用いることもできる。この場合、蹄部を水洗し、汚れをよく落としておく必要がある。