私たちは、畜産技術情報の収集・発信を通じてわが国の畜産の発展と生活に必要な畜産物の安定供給に寄与することを目指しています。

和牛ゲノムへの取り組みについて

これまでの取り組み

動物遺伝研究所

 当協会附属動物遺伝研究所(以下、動物遺伝研究所)は平成28年度末に閉鎖されましたが、肉用牛を対象に、DNA情報に基づいて遺伝的改良を効率よく進めるための技術開発や、遺伝的不良形質の解明などにおいて成果をあげ、我が国の畜産に大きく貢献してきました。

動物遺伝研究所 - 年報

1.和牛の経済形質の改良

 肉用牛にとって重要な形質である発育速度や脂肪交雑などの肉質に関係する遺伝子は数多くあると考えられています。これまでの研究で、和牛(黒毛和種)について、発育速度や脂肪交雑に影響を与えている遺伝子が所在する可能性がある染色体領域を明らかにし、遺伝子の同定にまでは至らなかったものの、これらの遺伝子のきわめて近くにあり、標識となるDNAマーカーを見つけました。
 発育速度や脂肪交雑に関係する遺伝子ひとつひとつの効果は非常に小さいため、DNAマーカーを手がかりに、それらの効果を積み上げて遺伝的能力を推定・評価するゲノミック評価手法を新たに開発しました。

2.遺伝性疾患原因遺伝子のキャリアの診断技術

 多くの遺伝性疾患(遺伝病)は単純劣性遺伝で、遺伝性疾患の原因となる異常遺伝子をホモに持つ牛のみが病気を発症し、ヘテロで持つ牛(キャリアという)は症状を示しません。
 しかし、キャリア同士を交配すると、その子がホモになる確率は25%となり、種雄牛のように多くの子を残す親がキャリアであると、異常遺伝子がホモになって病気を発症する子の数も増える可能性があります。そのため、異常遺伝子のキャリアを種雄牛として使わないことが望ましいです。
 動物遺伝研究所では、肉用牛において遺伝性疾患の原因となる遺伝子を同定し、これに基づいてキャリアの遺伝子診断法を確立しました。

3.牛肉の品種鑑定技術の開発

 牛には多くの品種があり、牛肉もいろいろな品種から生産されますが、中でも和牛(黒毛和種)の肉は最高級とされています。牛肉の品種表示の信頼性が確保されるためには、その表示が正しいかどうか判定する技術が必要で、現在では、技術開発により黒毛和種とホルスタイン種の牛肉をほぼ正確に判別することができます。

4.親子鑑別技術の開発

 牛では血統の証明等のために、親子関係を正確に記録しておく必要があります。これまでは、親子関係を血液型によって確認していましたが、DNAを用いると血液型によるよりも、正確かつ簡単に確認することができます。
 どのようなDNAマーカーを利用すればよいか研究を行った結果、約10個のDNAマーカーを選んで用いると、99.9%の確立で親子鑑別ができることを明らかにしました。
 また、DNAマーカーを利用して正確な個体識別を行うことも可能であり、牛肉のトレサビリティ―を裏付ける基本技術として活用されています。 

最近の取り組み

肉用牛のゲノム情報による生産性の向上

 動物遺伝研究所の閉鎖後は、その業務や機能を引き継いだ独立行政法人家畜改良センターの協力のもと、JRA畜産振興事業等を活用し、種雄牛造成を行う道県の研究機関とともに、肉用牛ゲノミック評価技術の研究開発や道県における地域の特性を生かした育種改良及び現場への普及等を推進するための取り組みを行っています。