ひと口に下痢といってもその原因は様々です。下痢の予防と治療のためには、まずその原因を見つけ出して取り除くことが重要です。普段の飼養管理の中で何か思い当たる点はありませんか?
哺乳子羊の下痢
初乳を十分に飲ませましたか?
- 生まれて30分以内に最初の乳付けをし、8時間以内に体重1kg当たり50ml以上飲ませる(新生子羊は初乳によって病気抵抗性を獲得)。
母乳や人工哺乳用ミルクに異常はありませんか?
- 母羊が乳房炎の場合は里子、人工哺乳へ切り替える。(乳房炎の治療も忘れずに!)
- 代用乳に異常があれば新しいものと交換する。(異臭がしたり溶けない粉ミルクには要注意!)
哺乳量は適切ですか?
- 哺乳瓶での哺乳量は200~300ml/回、4~6回/日が適量
冷たいミルクを与えていませんか?
- 哺乳時の適温は37~38℃(ただし、不断給与では4℃……飲み過ぎ防止のため)
濃厚飼料を食べ過ぎていませんか?
- クリープでの採食量に注意し、給与量を制限する。
敷料は清潔ですか?
- 敷料の定期交換で常に乾燥状態を保つこと。
- 子羊の寝床は日当たりの良い所に設置したい。
- 冷たいすきま風にも要注意!
放牧中の下痢
馴らし放牧をしましたか?
- 放牧は青草に充分馴らさせてから実施する。
(1週間程度かけて徐々に放牧時間を長くする)
内部寄生虫の駆除をしましたか?
- 定期的に内部寄生虫駆除を実施する。
(駆虫後2~3日間は舎内管理……放牧地の寄生虫汚染防止のため)
天候や気温の変化に注意!
- 寒さや長雨も下痢の原因
(体調不良羊は早めに舎飼いに)
舎飼時の下痢
給与している飼料に異常はありませんか?
- カビた飼料、異常発酵した醸造粕、凍ったサイレージなどは即交換する。
(飼槽の中や敷料も清潔に!)
飼料の種類を変えていませんか?
- 飼料の急変は消化不良のもと、変更した飼料は、少しずつ量を増やして慣らせる。
(特に醸造粕類や高水分の飼料には要注意!)
初期手当
発症羊の別飼い
- 蔓延防止のため、健全なめん羊から隔離する。
体温測定
- 体温の上昇は感染症の疑いがあり、早めに獣医師の診察を受ける。
- 体温の低下(子羊:37℃以下)
加温……赤外線ランプ、湯タンポ、湯浴など
飼料の制限・給与を中止または減量し、症状の回復に応じて徐々に増量する(子羊の哺乳についても同様)。
投薬・整腸剤、乳酸菌、健胃剤などの投与
- 細菌感染の場合は抗生物質(要指示薬)
- 寄生虫症の場合は駆虫薬(要指示薬を含む)
注)要指示薬は獣医師の指示により使用すること。
補液(主に子羊)・脱水時には水分とエネルギーを補給する。
- 電解質溶液(市販のスポーツドリンクで良い)をミルクの代わりに給与する。
- 給与量は100~200ml/回、1日3回程度
汚毛刈り
- めん羊の体も清潔に!
下痢の原因の多くは飼養管理によるものです。日頃からめん羊の状態には十分に注意をはらい、適正な飼料給与と健康管理に心がけましょう。
なお、細菌やウィルスの感染、内部寄生虫による下痢では、適切な処置がなければ他の健康なめん羊にも被害が及びます。また、他の疾病が原因で下痢を起こすことも考えられますので、原因不明で長引くような場合には、獣医師の診察を受けましょう。